今『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました―日本文化から読み解く幸せのカタチ』という本をkindleで読んでいます。本の中で気になった「老人が主役の昔ばなしが多い理由」という話を、今回紹介します。日本昔ばなしは「老人が主役」が多い?日本の昔ばなしの登場人物を整理してみる最近『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました―日本文化から読み解く幸せのカタチ』という本をkindleで読んでいます。本の中で著者の石川善樹さんがこのように言っていました。(本の紹介は最後へ)日本の昔話は親が子供に語るお話であるはずなのに、老人が主役の物語がやけに多いと思いませんか? 西洋の昔話と比べると、この傾向は特に顕著です。代表的な日本の昔ばなしを10個ピックアップして、老人が登場するかを調べてみました。昔ばなし老人が主人公老人が登場する桃太郎×登場する(桃太郎はおじいさんとおばあさんに育てられる)浦島太郎×登場しない?(物語には老人は出てこない、最後に主人公が老人になるため”登場する”ともいえる)かぐや姫×登場する(竹取の翁(おじいさん)とその妻が登場し、かぐや姫を育てる)一寸法師×登場する(おじいさんとおばあさんが一寸法師を育てる)花咲かじいさん◎登場する(主人公のおじいさんと、対比される別の悪いおじいさんが登場する)かさじぞう◎登場する(おじいさんが主人公として登場する)さるかに合戦×登場する(おじいさんとおばあさんが畑で作物を育てている設定がある)舌切り雀◎登場する(主人公のおじいさんと欲深いおばあさんが登場する)ぶんぶく茶釜◎登場する(和尚さんが登場し、彼がタヌキと関わる)わらしべ長者×登場する可能性がある(途中で出会う人々の中に年配者が含まれる可能性があり)結果として、老人が主人公であると考えられる昔ばなしは「花咲かじいさん」「かさじぞう」「舌切り雀」「ぶんぶく茶釜」の4つです。そして、老人が登場人物として登場する昔話を調べてみたところ、ほぼすべての昔ばなしでおじいさんやおばあさんが登場することが分かりました。全てが全て「老人が主役」ではないですが、思ったより多い印象ですよね。西洋の昔話はどうなの?日本の昔ばなしは老人の登場回数が多い傾向がありそうです。西洋の昔ばなしを比較対象にしても、その傾向が見られるか、調べてみました。昔ばなし老人が主人公老人が登場する赤ずきん×登場する(おばあさん)白雪姫×登場する(継母の女王)シンデレラ×登場する(継母)ヘンゼルとグレーテル×登場する(魔女)人魚姫×登場しないはだかの王様×登場する(王様)こびとのくつや×登場する(靴屋の夫婦)ブレーメンの音楽隊×登場する(年老いた動物たち)みにくいあひるの子×登場しない金のがちょう×登場しないなんと、今回調べていた10の話の中で、老人が主人公であると考えられる西洋の昔ばなしは無い結果に。そして老人が登場する西洋の昔ばなしは「赤ずきん」「白雪姫」「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「はだかの王様」「こびとのくつや」「ブレーメンの音楽隊」の7つとなりました。もっと多くの昔話を調べると結果が変わってくる可能性はありますが、西洋の昔話には老人の主人公が明らかに少なく、日本の昔ばなしには老人が主人公&登場人物として登場する傾向があることがよく分かる結果になりました。なぜ老人の登場が多い?– 日本の価値観と人生観昔ばなしの特徴を、日本と西洋で比較する確かに日本の昔ばなしでは、おじいさんやおばあさんの登場が多いことが良く分かりましたが、それはなぜなのでしょうか?著者の言葉をいくつか紹介しますね。無名で平凡なノーバディの何でもない日常を描き、ずっとめでてきたのが日本で語り継がれるお話のひとつの特徴といえるでしょう誰もが知っている有名人ではなく、何も持たない無名の人々の物語が好まれる。この特徴もまた、西洋的な昔話とは大きく異なっています。西洋的な昔話は、子どもが主人公で、悪い奴に騙されずに帰ってきたり、冒険して宝物を見つけたり、素敵な王子様と結婚して幸せになったり。そんな”立身出世”の展開がある昔ばなしがあります。対して、日本の昔ばなしは普通の人のいつもの日常が描かれている物語が多い。そして、老い先短い何も持たない老人がよく登場する。そして「かさじぞう」のように、欲を手放すことで幸せが転がってくる・訪れるような展開を持つ昔話もある。日本の価値観や人生観このように、昔ばなしというテーマでここまで日本と西洋で違いがあることが分かります。ではどのような違いなのか?これも、筆者の言葉を紹介させてください。このような昔話や落語から見えてくるのは、『ゼロに戻る』ことを良しとしてきた日本人の心性です。西洋のようにマイナスからゼロ、ゼロからプラスへと上を目指すのではなく、ゼロに戻ることに日本人は価値を見出してきたことが窺えます。「日本の昔話には始まりと同じ位置、『ゼロ地点』へと戻る結末が多い。そこから他者に成長や変化を求めず、あるがまま受容して生きる日本人の精神性が垣間見える。どうやら、日本人は「ゼロに戻る」「元に戻る」考え方がベースにあり、西洋はひたすら上を目指して励んでいくことに価値がある。西洋はいわゆる上昇志向ですね。「ゼロに戻る」シーンはがある昔ばなしは「浦島太郎」が分かりやすいですね。良いことがっても、悪いことがあっても、最後には元に戻っていく。そんな話が確かに多い印象です。「元に戻ってくる」ことは、「成長や変化を求めずに、あるがままで許される」。このような考え方が昔の日本人のベースだったということですね。昔ばなしから分かる、現代の生きづらさ?日本人は「成長や変化を求めずに、あるがままを大切にする」。そんな精神性を昔から大切にしていたことが、日本の昔ばなしから垣間見ることが出来ました。たとえ話ですが、江戸時代の古き精神性を持つ日本人が現代にやってきたらどう思うのか?きっと生きづらさを感じるのではないかと思っています。歴史の背景として、日本は明治維新から西洋列強の考えを取り入れて、どんどん西洋化し、戦後より資本主義的な考えが平凡な人々に浸透していくことで、いつの間にか”立身出世”や”お金が大事”という考えが、現代人のベースになっていると私は考えています。日本人のDNA的に「ありのままを大切にする」であっても、現在のOS「上を目指そう!」が邪魔をする…。そんな状況なのではないかなと考えています。どうしたら、日本人が日本人らしく幸せな状態になれるのか、研究を続けて調べていこうと思います。参考図書:興味があれば、ぜひどうぞ!むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました―日本文化から読み解く幸せのカタチ著者:石川善樹/吉田尚記写真:Amazon 商品紹介ページより