先日『ウェルビーイングマネジメント』という本を読みました。「理想の会社や職場」について、本の中で気になる話があったので、今回こちらでもシェアさせてください。働きやすい職場、どうして大事?「残業多いけど我慢できるな…」「給料は微妙だけど人は良いしな…」「上司や取引先とうまくやれなくないけど…」そんな、転職するまではいかないけどちょっとしたモヤモヤを抱えている人、いませんか?それ過去の私です。総務省統計局の2023年7〜9月期のデータによると、転職等希望者は1035万人で、働いている人全体の中で「15.3%」。過去最高を更新しているそうです。約7人が転職を希望しているということは、転職までいかないけどなんとなく不満を感じている人はもっと多そうですよね。今回読んだ本「ウェルビーイングマネジメント」によれば、2017年のギャラップ調査では、日本の「熱意あふれる社員」の割合はわずか6%。2020年には5.3%に下がり、世界平均の20%を大きく下回っている、とのこと。正直な話「熱意を持って仕事をしてます!」なんて声高に言える日本人自体が少ないのでは?と一瞬よぎりますが、その点を置いておいたとしても、「熱意をあふれる社員が少ない」という状況はありそうです。著者の加藤守和さんはこの現状を「大憂鬱時代」と呼んでいます。職場にやる気が出ないのは、職場の環境や文化が影響しているのでは?という視点に立って、加藤さんが理想の職場について語られていて、下記のように話されていました。「人は会社における最大の資産であり、その活性度によって企業価値は大きく変わる。社員の『体験価値』にいち早く気づき、言葉だけではなく、充実した『良い体験』を与え、人材の動機を引き出す企業こそ、勝ち残っていくだろう。ウェルビーイングこそが企業の競争優位の源泉となっていくのだ。」「ジム・コリンズの『適切な人をバスに乗せる』理論では、適切な人材を適切な場所に配置することが、組織のパフォーマンスを飛躍的に向上させるカギであるとされている。」人材という資産を活性化させることで、企業が市場競争に勝ち残っていける。そのために「社員の体験価値が念頭に置く」「適材適所で人材を配置する」ことが大切とのことでした。社員の体験価値を良い体験にしていくこと・社員のウェルビーイングな環境を作っていくことが、企業に求められているようです。理想の職場が持つ3つの条件加藤守和さんによると、理想の職場を考えるとき、押さえておきたいのが以下の3つの条件とのことです。1. 自己決定の余地仕事の進め方や内容に「自分の意思」を反映できる環境は、幸福感を高める。神戸大学の西村教授の研究によると「自己決定」が幸福感に最も強い影響を与える要素だそうです。多くの日本企業では、指示に従う「やらされ仕事」がまだまだ根強い状況。今回読んだ本書でも、日本企業の特徴についてこんな話がありました。「日本企業の特徴として、仕事の期待や責任があいまいなことが挙げられる。そして、これが「仕事のゴール」というものを捉えにくくし、仕事に対するのめりこみを阻害する要因の一つになっている。日本企業の正社員の仕事は、守備範囲が明確に定められていない。目の前の仕事を効率的にこなしても、時間的余裕が出来れば、「これ出来る?」と仕事が振られる。出来る人に無限に仕事が割り振られ、終わりのない戦いを強いられる。「効率的にやった人ほど損をする」ゲームを続けていれば、仕事に対するやる気など、起きようもないだろう。」確かに仕事の期待や責任があいまいであると、「どこまでやればいいのか?」「この案件でどこまで自分に責任があるのか?」がわからず、自分の仕事であると言いにくい。言いにくい状況が続くと、「面倒なので自分の仕事にしたくない」「どうせ自分で決められないなら程々にしよう」そんな人が出てきてもおかしくないですよね。自己決定が欠けてしまうと、どんなに頑張っても仕事への満足感が得られにくいと言えそうです。2. 公正さと感謝加藤守和さんによると、頑張りが正当に評価され「ありがとう」と感謝の言葉が示される職場はそれだけで働きがいが生まれる、とのこと。本書ではこれを「ピープル・エンゲージメント」として、信頼・成長・親和という3つの要素が重要だと述べています。ピープルマネジメントの3要素ピープル・エンゲージメントは、人との関係性を表しているが、関係性と一言で言っても幅広いため、以下の3つの要素に分類されています。これらの3つの要素を満たすことで、他者との結びつきも実感させ、ピープル・エンゲージメントを高めることが出来る。信頼: 公正で、尊重されていることが実感できる関係成長: 相互に刺激を与えあい、成長しあえる関係親和: 親しみと調和のとれた良好な関係また、社員を公正に扱うことの重要性についても、このように語っていました。会社から仕事ぶりが公正に評価される。会社から社員に感謝の言葉があり経緯が払われる。仕事に見合った十分な報酬が支払われている。教育投資や成長の機会が与えられる。社員を使いつぶすのではなく、個性や長所を認め、伸ばしてくれる。このように、個々人が会社全体から公正に大切に扱われる「良い体験」が組織に対する信頼となり、結びつきを強くしていく。3. 成長の実感がある環境アメリカの教育学者 デイヴィッド・コルブ(David A. Kolb) によって提唱された体験学習理論では、人が「ストレッチゾーン」で挑戦しながら学ぶことが成長に繋がるとされています。「ストレッチゾーン」とは、未知のものと出会い、背伸びの挑戦を要する状態とされていて、すでに出来ることと全く知らないことが混在するゾーン。失敗のリスクもありますが、適度な挑戦があって、上司や同僚からのフィードバックを受けられると、社員のやりがいを引き出すことがでしていける、ということでした。働きやすさの具体的な特徴を挙げてみる理想の職場の条件について、本の内容をもとに紹介してきましたが、具体的には、どんな職場が「理想」に近いのでしょう?これまであまり言葉にしてこなかったのですが、箇条書きに出してみました。社員が自分の裁量で仕事を進められる環境。目標が明確でありながら、達成方法は個人に委ねられている。フレキシブルな働き方(リモートワーク、時短勤務など)が可能。努力や成果が正当に評価され、感謝の言葉が日常的に飛び交う。年齢や性別に関係なく、公正な昇進や報酬がある。フィードバック文化が根付いており、上司や同僚から定期的に評価を受けられる。チャレンジングなプロジェクトに参加できる機会がある。社員が新しいスキルを習得できる研修や教育プログラムが充実している。フィードバックを通じて、自分の成長を実感できる仕組みがある。お互いを信頼し合える文化が根付いている。心理的安全性があり、意見やアイデアを自由に出せる雰囲気。同僚との親和性が高く、協力し合える環境。社員の多様なバックグラウンドや価値観を受け入れる文化がある。それぞれの得意分野や個性を活かした役割分担が行われる。社員一人ひとりのプライベートと仕事のバランス(ワークライフバランス)を尊重する。社員が自分の仕事に「意義」や「やりがい」を感じられる。自分らしさを投影できる仕事が任される。会社の目標やミッションに共感し、それに向けて貢献できる感覚がある。清潔で快適なオフィス、または働きやすいリモートワーク環境が整っている。健康やメンタルヘルスに配慮した福利厚生がある。ストレスの少ない仕事量とペースが確保されている。社員が経営に参加できる仕組みや意見を反映する文化がある。定期的なアンケートやミーティングを通じて、社員の意見が聞かれる。社員の提案や意見が実際に取り入れられる成功事例がある。読者のみなさんも、これらの特徴がどの程度今の職場で満たされているか、ぜひチェックしてみて欲しいです。(もはや、読者の皆さんがどの特徴を重視するかアンケートを取ってみたいところです)最後に思わず共感してしまったドラッカーの言葉を紹介します。「マネジメントの多くは、あらゆる資源のうち人が最も活用されず、その潜在能力も開発されないことを知っている。だが現実には、人のマネジメントに関する従来のアプローチのほとんどが、人を資源としてではなく、問題、雑事、費用として扱っている。」「ブラック企業」という言葉が出てきて久しいですが、社員一人ひとりの可能性を引き出すことが会社のパフォーマンスを上げられることについて、もう少し立ち止まって考えてみても良いのでは?と思うことができた本でした。興味が湧いたら、ぜひ本書を読んでみていただきたいです。参考図書ウェルビーイングマネジメント著者:加藤守和写真:Amazon 商品紹介ページより