最近よく聞く「ウェルビーイング」という言葉。なんとなくポジティブな響きだけど、「結局どういう意味?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか?ウェルビーイングは 「身体的・精神的・社会的に良い状態にあること」 を指す言葉で、単なる「幸せ」や「健康」よりも、もう少し広い意味を持つ概念です。いざ学ぼうとすると範囲が広すぎて、どこから手をつければいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、 ウェルビーイングの基本を無理なく学べる本3冊 をご紹介します。日本文化や心理学、研究データなどさまざまな視点から学べる本を厳選しました。どれも初心者向けで、楽しく読み進められる内容です。ウェルビーイングとは何か、ぱっと知りたい!という方は、ここちの「ウェルビーイングって何?」の記事もあわせてチェックしてみてください。〈本題の前に〉”ウェルビーイング経営”もよく聞きますよねおすすめ本を紹介する前に、表題について。近年「ウェルビーイング経営」という言葉を耳にする機会が増えました。もしかしたら「ウェルビーイング経営」という言葉から、ウェルビーイングを知った方も多いのではないでしょうか?ウェルビーイング経営とは、企業が従業員の幸福度や健康を重視し、それを経営戦略に組み込むアプローチを指します。書籍紹介の中でも登場する慶應義塾大学の前野隆司教授は、「幸福度が高い社員ほど、創造性や生産性が向上する」と指摘しており、企業にとってもウェルビーイングの向上が重要な課題となっています。具体的には、柔軟な働き方の導入や職場環境の改善、メンタルヘルスのサポートなど、従業員が心身ともに健康で働ける環境づくりが進められています。例えば、株式会社リクルートでは、社員のウェルビーイングの向上を目的に、働く場所や時間を自由に選べる制度を導入。これにより、従業員のストレスが軽減し、仕事の満足度が向上したと報告されています。本記事で紹介する本は、ウェルビーイングにまつわる一般的な内容・個人的な内容が多い書籍であるため、ウェルビーイング経営やビジネスの視点からウェルビーイングに関する書籍については、別の記事で詳しくご紹介する予定です。気長に待っていただけると大変嬉しいです。初心者向け!おすすめの書籍 3選をご紹介1. まず読むならこの本!『ウェルビーイング』前野隆司・前野マドカ参照:ウェルビーイング(日経文庫)前野 隆司, 前野 マドカ(著)✅ こんな人におすすめウェルビーイングの基本を学びたい人研究データや具体例も知りたい人この本は、ウェルビーイング研究の第一人者である前野隆司教授と前野マドカさん夫妻が、「ウェルビーイングとは何か?」をわかりやすく解説した本です。学術的な内容もありますが、具体例が多く、初心者でも理解しやすい構成になっています。「ウェルビーイングとはそもそも何?」「どんな社会背景がある?」「どんな研究がされている?」などの疑問を感じられている人にぴったりの本と言えます。各国のウェルビーイングに対する考え方や、ローカルな地域や自治体での活動、ウェルビーイングという考え方を経営に生かしている企業の実例など、「ウェルビーイング」という領域で行われている様々な活動について広く学ぶことが出来る一冊です。こちらの本を読むことが出来れば、日本におけるウェルビーイングの全体像が捉えられるはずです。印象的な内容:4つの因子前田夫妻が提唱している「ウェルビーイングを高める4つの因子」 という考え方が、実践的でとても参考になります。ウェルビーイングを高めるためには「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」という4つの要素が重要だと、前野さんは述べています。やってみよう(チャレンジ・成長)ありがとう(人とのつながり)なんとかなる(ポジティブな思考)ありのままに(自己受容)どれもシンプルな言葉であることで、子どもから大人まで理解しやすく、日々ウェルビーイングを意識して生活しやすいのだと感じました。確かにこの4つを意識すると 「良い状態」「ここちがよい状態」 に繋がりやすい気がします。2. 日本文化からひも解くなら『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました』石川善樹・吉田尚記 参照:『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました 日本文化から読み解く幸せのカタチ』石川善樹・吉田尚記✅ こんな人におすすめ日本文化とウェルビーイングの関係に興味がある人日常の中で、日本人が何を幸せと感じているか知りたい人この本は、日本の昔話や文化に根付いた「幸福観」から、ウェルビーイングを読み解く一冊です。著者は予防医学研究者の石川善樹さんと、ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さん。2人のポッドキャスト対談をベースにした、ユニークな視点が魅力です。日本と西洋では「ウェルビーイング(幸福感)」の捉え方が異なります。本書では、昔話のストーリーや「わびさび」、日本人特有のコミュニケーションの特徴などを切り口に、日本人ならではのウェルビーイングを考察しています。印象的な内容:否定の応酬「日本人の自己肯定感は否定を否定されて、ようやく生まれる。」という著者の言葉がとても印象的でした。この言葉には日本独特のウェルビーイング観が詰まっているとのことです。というのも、日本人は「すごいですね」と褒められると、つい「いえいえ、そんなことありません」と謙遜することが多いですよね。でも、それを相手に「いや、本当にすごいよ!」と “自分の否定を他者に否定” してもらうことで、ようやく自己肯定感が生まれるという仕組みになっているのです。日本人の幸福観は、「自分で自分を肯定する」のではなく、「周りの人とやりとりする中で形作られる」という点がとても興味深いですよね。このような文化的な違いが大小さまざまあり、日本人ならではのウェルビーイング観にどのように影響しているのか、本書ではさまざまな角度から語られています。3.『仕事も人生もスーッと整う 幸せになる練習。ウェルビーイング73の行動リスト』前野マドカ参照:『仕事も人生もスーッと整う 幸せになる練習。ウェルビーイング73の行動リスト』前野マドカ✅ こんな人におすすめ忙しい日常でウェルビーイングを取り入れたい人気軽に実践できる方法を知りたい人一冊目に紹介した「ウェルビーイング」という本の著者である前野マドカさんによる本です。ウェルビーイングを 「実践する」 方法を、心理学の視点から解説した一冊。働く女性に向けて、73の幸福アクションリスト を紹介しています。本書はイラストも多く、気軽に取り組める内容になっています。「飽き性でも怠け者でも、チャレンジできる行動リストが見つかる。」という著者の言葉の通りで、「ウェルビーイングのために何かしなきゃ!」と気負わなくても、日常のちょっとした行動を変えるだけで、幸福度を上げることはできるんだと気づかされました。73のアクションリストは、どれもすぐに実践できるものばかり。特に「朝に好きな音楽を聴く」や「帰宅後に5分間リラックスタイムを作る」など、 シンプルだけど効果がありそうな行動 が多いのが魅力的です。ちなみに、有名な研究者について少し詳しくご紹介日本におけるウェルビーイング研究の第一人者として知られるのが、『ウェルビーイング』を執筆した一人である、慶應義塾大学大学院の前野隆司教授です。前野教授は「幸福学」の観点から、人々がより良い状態で生きるための要因を研究しています。先程ご紹介した「ウェルビーイングを高める4つの因子」(やってみよう・ありがとう・なんとかなる・ありのままに)を提唱し、個人の幸福度向上に関する実証研究を行っています。また、文化心理学の視点からウェルビーイングを研究するのが、京都大学の内田由紀子教授です。内田教授は、幸福感やウェルビーイングが、文化や社会との関わりの中でどのように形成されるのかを研究しています。例えば、日本人の幸福観が「個人の成功」よりも「周囲との調和」や「人とのつながり」に強く影響を受けることを明らかにし、東洋と西洋のウェルビーイングの違いを分析しています。また、予防医学の観点からウェルビーイングを研究するのが、『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました』の著者である石川善樹さん(医学博士・公衆衛生学)です。石川さんは、「人はなぜ健康でありたいのか?」という根本的な問いに向き合い、医学・行動科学・脳科学の知見をもとに、人が持続的にウェルビーイングな状態を維持するための方法を探求しています。日本の文化や昔話を通して、幸福のあり方をひも解いています。私自身は今、内田由紀子さんの著書を読んで、文化心理学の視点でのウェルビーイングについて学んでいるところです。他にも多くのウェルビーイング研究者がいらっしゃるので、様々な研究者の著書を読んで、今後も読者の皆さんのタメになる情報を共有していきます。初心者向けの本から学ぶのはいかがですか?ウェルビーイングの基本を学べる3冊をご紹介しました。自分に合った本をぜひ選んで、読んでみてもらえると嬉しいです。また、ビジネスや経営視点でのウェルビーイングにまつわる本も今後読み進めていきますので、また折を見てご紹介しますね!